新しい季節、新しい場所、そして新しい学園生活。新生活を迎える御雲島を、人々は大型客船のデッキ上から眺めていた。そんな様子を、船内から覗く車椅子に乗った少女の姿。閉鎖的な土地に、山を隔てた区分け。コンビニやファミレスなどは一切なく、娯楽施設もほとんどない。ネットワークを制約された島の中で、人々は初めて顔を合わせる相手と相部屋で生活することになる。「すごい、本当になにもないんですね」少年のような見た目をした君島翔が、窓の外を流れる景色を眺めながらつぶやく。自動車を運転する職員がバックミラー越しに、後部座席に目を向ける。 二人の少女が、それぞれ窓の外を眺めていた。 職員はそれぞれに、この計画に参加した理由を尋ねる。「色々なことを勉強しなおして、自分の視野をもっと広げたいなと……思いまして」君島翔は、言葉を濁しながら無難な答えを返す。そして、隣に座る、目を合わせない少女を覗き見た。 星乃あやめは自分の両足をぎゅっとつかむ。「私は――今の自分から、変わりたいと思ったからです」総勢600人余りが参加する、トライメント計画。果たして、彼らの『卒業』は、どのような形で訪れるのか。これは――今を変えたいと願うあなたへ贈る、再挑戦の物語。